松井孝治インタビュー by 清水真人
最終回 『我が国の統治機構改革への松井の思い~「あたらしい国のかたち2.0宣言文」の発出を受けて~』

このシリーズは、当財団のエグゼクティブフェローである松井孝治が、経済産業省在職時の後半に内閣や総理官邸、そして国会と向き合う仕事に連続して携わった経験をもとに、日本の統治機構に抱いた改革の思い、そして、それを実現するために参議院議員として様々な職責に携わって抱いた「熱」と「違和感」、そして今抱く令和への思いを語ります。これは、平成の時代を通じた日本の統治構造を巡る一つの視点と問題提起であり、日本経済新聞 編集委員  清水真人 がインタビュアーとしてのスキルをフルに活かして物語を紡ぎだします。

今回は、ここまでの話を踏まえ、かつ、令和の新しい時代を見据えて「新しい国の形」を考える野党超党派の勉強会で披露した内容をご紹介します。松井主幹研究員は、最初は講師として話し、その後アドバイザー的な役割を務めることになった訳ですが、まず松井自身の「本件への関わり」がどういうものであったのかを説明します。
最初に、ここに参加したメンバーが共有する「認識」と「思い」は何だったのかを語ります。松井の基本的な考え方は、「新しい国のかたち」、「新しい公共」という言葉に集約される訳ですが、それは、中央の内部、中央と地方、人材の結集と公務員制度の在り方、安全保障、教育など幅広い概念と政策を包含する広いものです。
この問題意識が生まれた背景は、たとえば「アメリカ」という一つの国によりかかるだけでは、日本が抱える様々な問題に取り組み、解決していける時代ではなくなっており、「自律」と「分散」と「協調」をどう組み合わせていくかを考えなければならないという認識から生まれたものです。これは「明治以来構築され、維持されてきた枠組み自体を再考する」という新しい思想なのかも知れません。他方、そこで提示された理念、考え方は茫漠としたものであるという面があり、その具体像について清水が鋭く切り込みます。
今回は、ある種「閉塞感」に覆われた日本の問題に取り組むための松井の「考え」が披露されます。これは、あくまで松井の個人的な考えであり、様々な賛否が出るものだろうと考えられますが、皆様の考えるヒントになればということで、最後の回のコンテンツとしてご披露しました。

  • 野党超党派の勉強会で検討した「議員立法」とは何を目指すものだったのか?
  • 政権も理念を語らない時代に示すべき「理念」とは何か?
  • 「新しい公共」の本来の考え方と「統治機構の再構築」の関係。「新しいくにのかたち」とは?
  • 自律・分散・協調をどう実現していくのか?
  • いま、どこに、どんな問題が顕在化しており、どういう取り組みが考えられるのか?
  • 今の国会の議論を聞いていると、日本の分断が次々と生まれていきかねない。国柄を変えるために政治家に求められるものは何か?

松井 孝治
慶應義塾大学総合政策学部 教授
一般財団法人創発プラットフォーム理事

1960年、京都市生まれ。東京大学教養学科卒業後、通産省入省。
内閣副参事官、通産省大臣官房総務課法令審査委員等を経て通産省を退職。
参議院議員を2001年~2012年つとめ、その間、内閣官房副長官、参議院内閣委員長、民主党筆頭副幹事長などを歴任。
その後2013年より慶應義塾大学教授。
著書・論文に「総理の原稿」共著(岩波書店)、「『七人の侍』に学ぶ公務員制度改革論」(中公公論2021年2月号)、「「新しい公共」の国家をめざせ」(Voice2021年7月号)など多数

インタビュアー
清水 真人
日本経済新聞社 編集委員

1964(昭和39)年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部(首相官邸、自民党、公明党、外務省などを担当)、経済部(大蔵省などを担当)、ジュネーブ支局長を経て、2004(平成16)年より経済解説部編集委員。
首相官邸、自民党、財務省、外務省など永田町と霞が関の取材経験は30年を超す。政治と経済、政と官を「越境」し、統治システムや政策決定過程を多角的に分析する。
著書に平成政治史を統治構造改革の論理から読み解く『平成デモクラシー史』(ちくま新書)のほか、『小泉進次郎と権力』(日本経済新聞出版社)、『財務省と政治』(中公新書)など。2020年4月から広島大学大学院人間社会科学研究科特任教授。

Twitter:https://twitter.com/sohatsupf
一般財団法人創発プラットフォーム:https://www.sohatsu.or.jp/